
先週金曜日の深夜はNHK・ハイビジョンで3時間半に渡りPromsのLast Nightが放送されていました。Promsはザルツブルグと並ぶ有名な音楽祭のひとつで、
1895年8月10日に最初の幕が降りてから現在まで110年の歴史を持っています。クラシック音楽を一般的にする目的で、開催場所であったクイーンズ・ホールのマネージャー・Robert NewmanとSir Henry Woodが設立しました。 当初は「Mr. Robert Newman’s Promenade Concert」と呼ばれていましたが、1930年にBBCが運営を担うことになり、開催場所もロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールに移り現在に至ります。PromsとはPromenadeの意味です。
ロイヤル・アルバート・ホールというと、クラシック音楽で有名でしたが、1970年代頃からはロック・ポップスのアーティスト達が出演するようになり、
最近ではロッド・スチュアートが往年のフェイセス時代のロン・ウッド(現在はR.STONESに)をゲストにロックの名曲の数々を、そしてオーケストラをバックにアメリカン・スタンダードを披露し話題をさらいました。そんな音楽の殿堂で05年9月10日にPromsのラスト・コンサートが行われました。BBCシンフォニーをはじめ、多彩なゲスト達による演奏の中で印象に残ったものは、世界的ギターリストのジョン・ウィリアムスが弾いたロドリーゴのアランフェス協奏曲が圧巻でした。今まで彼のライブには行ったことがないので得をした感じです。それからイギリス人作曲家のランバートが作った「リオ・グランデ」が良かった。イギリス人の作品はなんか生真面目で硬い感じが多いのですが、この作品はガーシュインみたいに軽妙で洒落たウイットがあり、編成もオーケストラにパーカッションが6人、ソロ・ピアノにメゾ・ソプラノ入りと変わっているのがいい。まさに英国の「ラプソディー・イン・ブルー」と呼ばれるに相応しい作品です。しかし何と言っても凄かったのはフィナーレです。オリンピックのような特別なものであったら分かるのですが、毎年こんなに盛り上がっちゃうなんて信じられません。というのは、アルバート・ホールを中心に、ロンドン・ハイド・パーク、マンチェスター・ヒートン・パーク、ウエールズ・シングルトン・パーク、アイルランド・ベルファスト市庁舎前広場、グラスゴー・グラスゴー・グリーンの英国全土5カ所にそれぞれオーケストラと合唱隊を配置し、サテライトで結び、トラファルガー海戦を歌った「海の歌による幻想曲」を一斉に奏でるのです。進軍ラッパから始まって英国の勝利を讃える歓喜の歌が聴衆も一緒になって鳴り響きます。これは凄い、これぞ愛国心だ。彼等がどういう気持ちで歌っているのか本心は分からないけど、もし日本で同じようなことをやろうと思ったら、軍国主義の復活だとか、隣国との問題やら何やらで絶対に無理かもしれない。そこで思ったことは、環境問題や政治的な問題で音楽家や芸術家達がメーッセージを発しなくてはならない状況になることは不幸だということです。吉江一男