
(From the left、Yoshie, Mr. Mel Torme, Arther Hamilton , Joe Harnell , Mel's manager at Capitol Recording Studio)
今回は、私がまだ高校生でジャズにとり憑かれ初めていた頃、最も好きだったシンガーの一人であったメル・トーメと仕事をした時の話です。今回の音楽は、東京ガスのシティ・エアコン・TOKIOのCM用に、都会的で洗練されたジャズを作って欲しいというクライアントからのオーダーにより制作されました。できればCITYを歌詞の中に入れて歌って欲しいとの具体的な要望を受け、作家と歌手の候補選びが始まり、その当時でまだ現役のジャズ・ボーカリストが何人か上がった中で、メル・トーメに白羽の矢が立ったのでした。メル・トーメは“ベルベットの霧”などと言われ、スキャットのアドリブを交えながら歌う独特のスタイルで、ジャズ・ボーカル史上に輝かしい足跡を残した偉大なるシンガーです。
http://oops-music.com/info/view.html?oid=3890
歌ってくれることを願いながら、ロス・アンゼルスのロビン(ビルボード・マガジン、ワーナー・エレクトラ・アサイラムを経て85年より弊社の現地スタッフとして勤務)に連絡をとってもらったところOKの返事が来ました。凄い!メル・トーメが歌ってくれる。楽曲を誰に作ってもらおうか? そこでJOE HARNELLとARTHER HAMILTONのコンビに依頼しました。JOE HARNELLはピアニストとして18枚のアルバムをリリースし、“Fly Me To The Moon”でグラミーを受賞し、ペギー・リーの代表曲“フィーバー”のアレンジもしています。ARTHER HAMILTONは、アメリカン・スタンダード史に燦然と輝くあの名曲“Cry Me A River”の作詞・作曲家です。私はペギー・リーのバージョンが秀逸だと思います。二人ともペギー・リーを通じて長い間親交がありました。そんな二人が日本のCMの為にオリジナル・ソングを書いてくれて、メル・トーメが歌うんですよ。夢のような話です。10日後位にJOEが自宅で弾き語りで録音したデモ・テープが届き、楽曲の美しさに目頭が熱くなったのを覚えています。ロスでのレコーディングは勿論キャピトル・レコーディング・スタジオで、ピアノ・トリオにジェリー・ヘイのトランペット・ソロを加えた編成で行われました。メルはスタジオに来ていたARTHER HAMILTONに会うと「あなたが、あの美しい曲Cry Me A Riverの作家だったんだね。会えて本当に嬉しい。今回の曲も素晴しいよ。じゃ歌おうか、、、」と言ってマイクに向かうと、スイートでシャギーなベルベット・ヴォイスをもったいない位十分に聴かせてくれて、最高のトラックが出来上がり、CMも無事に放送されたのでした。なおメル・トーメは1999年6月5日ロス・アンゼルスで74年の生涯を終えました。吉江一男
この希少なオリジナル音源“The City”はi-Tunes Music Storeで購入できます。