(アンコールでは演奏者、観客が総立ちでバーンスタインを演奏している)
昨晩は待ちに待ったSBYOのコンサートが池袋芸術劇場であった。ベネズエラから来たこのオーケストラは25才までの若い団員で構成されていて、今世界中で最もホットなオケである。20型の弦楽器群にそれぞれ6本のトランペットにトロンボーン、8本のホルン、それに5管編成の木管群という巨大に増幅されてるにも拘らず、このオケは見事に抑制されたボリュームとダイナミックスで情熱的でありながら気品を備えている。1曲目ラヴェル「ダフニスとクロエ」のピアニッシモで吹くトランペット6本によるユニゾンは、DRCの85年ECHEZEAUXのように甘く、透明で、それを骨格のしっかりとした弦楽器群がささえ、ちょっと情熱的過ぎる部分もあるが、いたずら好きのラヴェルなので大OK。2曲目カステジャーノス「パカイリグアの聖なる十字架」は哀愁に満ちたメロディーや、美しく静かな楽章をはさみながら、沸き立つようなラテンの熱いリズムに圧倒された。特に80人もの弦楽器の先ずグルーブ有りきの演奏を聴いていると、この楽器は打楽器の一種ではないかとさえ思ってしまう。ワインに例えると2005年 Concha Y Toro Cabernet Don Melchorかな。 最後のチャイコフスキー「交響曲5番」の第一楽章におけるホルンのソロは、いわゆるウイーン・フィルのような型にはまらず、自由で無垢でのびのびしていて奇麗だった。フルートもクラリネットも同様で、クラシック音楽に対してというより音楽そのものに無垢で純粋だ。第4楽章は広大なロシア大陸が地響きを立てて溌溂と迫って来て圧巻だった。3曲を聴いて、瑞々しく、自由で、愛に満ち溢れ、魂を開放させながらきっちりした規律のもと、これだけの音楽集団をまとめるグスターヴォ・デュダメルはこれから先が楽しみである。まだまだその全容を見せてくれない82年MOUTONのように。